第11回 小野市詩歌文学賞受賞の前句集『記憶における沼とその他の在処』より、約3年ぶりの著者新句集。
この作者は、目に映り、耳に聞えるものを、ふつうの感受のしかた以上に克明かつ分析的に捉え、
それをやや理屈っぽくも見える、解像度の高い言葉遣いで再構成する。
だが、決して「言葉だけで遊んだ俳句」ではない。
生身で受け止めた世界の手応えを、徒労すれすれの誠実さと、
いくぶんかの不器用さと生硬さをもって一句に仕上げる。
その句はしばしば、今まで見たことがなかったような物事の相貌を見せてくれる。
―岸本尚毅(本書帯文より)