亡命作家と、絶滅言語の翻訳家。―「存在しない言葉」を届けるふたりの物語。
「出版してよ。私が死んだらね」
故人の願いを叶えるため、海を渡るナディア。
遠い島国の山奥の幽霊屋敷に、問題の翻訳家は待っていた。
「ご依頼ですね。高地アーレンベルク語ですか。低地アーレンベルク語ですか」
ナディアには馴染み深い言葉だが、この国の人たちは耳にしたことがないという。
謎の言語を扱う翻訳家の少女と、母語を物珍しがられることに苛立つ作家。
それでも誰かに届く形へと編み直す営みは、翻訳なのか―あるいは魂を削る嘘なのか。



